ゆめやでは、混じりけのない絹100%の正絹のアンティークを中心に、約500点のきものをそろえています。
皆、手から手へと受け継がれてきたものに宿るあたたかみと美しさを兼ね備えたきものばかりです。
私たちは、そのひとつひとつに丁寧な手仕事を尽くし、再び輝きをまとったきものに蘇らせて、世に送り出しています。
ゆめやが扱うきものは、100年以上前に職人の手によって作られたもの。
お蚕さんがつむいだ絹糸からつくられた生地は、しっとりとした光沢を帯び、
肌あたりもなめらかで、着る人の心と身体をやさしく包みます。
そんなきものたちは、私たちの手元にやってくるまでにさまざまな歴史を歩んできています。
昭和の初期、嫁入り道具として結婚式の際にお召しになったきり、桐の箱に入れられて大切に保管されていたもの。
関東大震災の難を逃れて東京の旧家の蔵から出てきたものなどさまざま。
いずれにしても、ご縁があって私たちの元にやってきたきものは、すべて長い年月を過ごしてきているので、
そのまま着ることはできません。1つ1つ状態を確認してお直しを施します。
まず、仕入れてきたきものに汚れや臭いなどがないか確認します。
汚れがひどいときにはクリーニングにも出さなくてはなりません。また刺繍が取れている箇所がないかも丁寧に確認します。
お直しすべき箇所がわかったら、洗い張りをしたり、きものの裏を替えたり、比翼をつけたり。
中でも刺繍直しは1番大変です。
1つの模様でも職人が大変な時間をかけて精巧に作り上げているものなので、
本来の風合いを残しつつほつれた箇所を再現するのはとても骨の折れるしごとなのです。
また、アンティークきものは100年以上前に作られたきものですから、
現代の日本人の平均身長より小さいものが多く、その場合は子ども用に仕立て直します。
きものとしての傷みがひどい場合は、糸を解き、きものより小さい帯や羽織に仕立て直すこともあります。
これらは和裁を知っているゆめやだからできることです。
こうしてゆめやは、きものたちを今の時代に合う形で蘇らせ、きものは今もなお生き続けています。
人生の節目に、また生活の一部に、ゆめやのきものが寄り添えたら、とてもうれしく思います。
ゆめや店主 田村芳子
手に職を付けるつもりで始めた和裁。師範の免状、呉服屋さんでのアルバイト、着付けの勉強と、興味は深まるばかりでした。
子育て中はちょっと距離を置いていましたが、とある古着屋さんの店先で1枚の黒振袖に出会ったのです。
気品あふれる華紋、手描きの風合い、味わい深いぼかしに釘付けになりました。
いわゆる一目惚れ、きものへの情熱が再燃です。
きものデザイナーであり、アンティークきものの収集家としても名高い池田重子先生を心の師と仰ぎつつ、
「これは」というきものを集めるように。以来、きものへの情熱は尽きることがありません。
選ぶときに重視しているのは、職人の手仕事の確かさです。花びら1枚刺すのにも大変な手間暇をかけた手刺繍。
機械には決して真似できないぬくもりをたたえた、見事な手絞り。版木の精巧さがうかがえるような、繊細な江戸小紋など。
名もなき職人たちが人生をかけて磨いた技術をそこに込め、大切に受け継がれてきたきものに惹かれます。
ほとんどのきものは、親御さんが愛娘のために何年もかけて作ったものです。未来への夢と、家族の愛が詰っています。
ある年、総絞りのきものを成人式用にとお借りいただいた方がいらっしゃいました。
10年後、その方の10歳下の妹さんが「同じきものを借りたい」とお越しになったのです。
姉妹や親子で同じきものに身を包んで人生の節目を迎えるなんて、とても夢のあることだと思います。
私が集めたきものたちは、私のものではなく、ほんのひととき「預かっている」だけなのだと思います。
私は、きものたちが歩む長い歴史の一端を担うに過ぎません。
そうであるならば、縁あって私の手もとにあるきものたちを、ただ寝かせておいてはいけない。
できるかぎりの手入れをしながら、たくさんの人に着ていただき、たくさんの人に見ていただけるようにしたい。
そんな思いから、アンティークきものレンタル「ゆめや」を始めました。
お直しは私たちゆめやだけですべて完結するわけではありません。
多くの方にご協力いただいて、ゆめやのきものを皆さまにお届けすることができています。
皆その道のプロの方々です。